この記事をご覧いただくいただく方に遺言書作成の際に明確にしておくことをご紹介します。私は、10年間銀行のフアイナンシャルプランナーとして、中高年の皆様のご相談をうけたまわってまいりました。ほとんどの皆様は、60歳から67歳位までは常に周りのご友人とかかつての職場の同僚にご相談をして年金、家の建て替え、子どもの結婚等をきめます。67歳以降になると、周りの方からの情報だけでは対処しきれなくなります。つまり人のふり見てといった真似でごまかせなくなります。そしてこの年齢からは、すべて問題は個別案件となりますので、なかなかいままで使った便利なマニュアルがありません。
世の中の仕組がそうなっておりますが、一般的に問題が高度になればなるほど、マニュアルはありません。人生の生き方マニュアルというものはありません。特に、遺言書のマニュアルというものはありませんので、ご注意ください。なぜなら、10万人の方がまったく同じ人生を歩まれたのならマニュアル化も可能でしょうが、お1人おひとりまったく違う人生であり、子どもの数、周りの親族の状況、財産についても、すべて個別案件の世界だからです。ご友人の遺言書があなたの参考になったということはありません。書店に行けばたくさんの遺言書の本が並んでおりますが、それを数冊購入したからといって、最良の遺言書が書けるものでもありません。書店の本をめくって、こんなものかとざっと目を通しておしまいといったところです。
そこで、遺言書を作成しようとした場合の最大のポイントをご紹介します。それはすべて遺言書はオーダーメイドであることを把握されることです。自分用に知恵を絞った自分だけの遺言書があなたに一番ぴったりのものだということです。それがひとりよがりでいびつな内容になると、相続争いの元を作ることになります。また、長男にこれを渡そうと書いた遺言の内容を、悲しいことに長男の死後書き換えることだって生じます。あなただけの遺言書を書こうとした場合、常に息の長い付き合いのできる遺言の専門家をそばにおいて適切なアドバイスを受けながら、作成、点検、再作成を『急ぎ過ぎず休み過ぎず』着実に進めていくことをお勧めします。私は、10年間のフアイナンシャルプランナーとしての経験を活かし、そのような長いお付き合いを通してご年配の方のお手伝いをしてまいりましたので、一度限りの短時間のお付き合いというよりも、長い期間、それこそ『急ぎ過ぎず休み過ぎず』あなたに寄り添うアドバイザーとしてお役に立ちたいと考えて仕事をしております。
結びになりますが、 遺言書には、決してどなたの悪口も書かないようお勧めします。書きたいのは十分わかります。しかし書いてよい結果は生まれません。また、自分の書いた遺言書の中身はできるだけ関係者に公開をするほうがよいとのお考えの方もおられますが、私の経験とこれまでの分析では、書いたその内容は一切口外しないことをお勧めします。遺言内容を公開したばかりに、各自のもらう範囲が明確になった結果、本人の医療費に本人の預金の切り崩しもままならない窮屈な思いをされる方もいます。預金を誰々に相続させると書いていることを知った相手から、その預金の引きおろしにクレームが付き、同居の長男の負担で医療費を払い続けたというケースもあります。充分に慎重な上にも慎重な対応をお勧めします。これは遺言を書いたあとの心構えです。誤解の無いように添えますが、遺言書で銀行預金を長女に相続されると書いた翌日にその預金をご自分が降ろしてご自分がすべて使っても何ら問題ありません。ご自分の相続が発生したときにその預金の残高があれば長女はもらえるし、無ければもらえないだけの話なのです。
とにかく、遺言作成のお手伝いの仕事は作成された方の遺言執行までの長いお付き合いになるケースが多いので、共に人生を歩むような気持ちで、お付き合いをいただける遺言アドバイザーでありたいと思いながら、お手伝いをしております。じっくりと腰を据えてあなたのお気持ちを伺うことから、いつも遺言作成の仕事は始まります。